「わかってるもん」



一言だけ愛里にそう返事をして、私はゆっくりと席を立った。


ざわざわと黒板の前にむらがってる人たちの中で、体育祭実行委員と呼ばれる人を探す。


ようやく見つけたその人は、チョークをもってそれぞれの競技の下に参加する生徒の名前を書いていた。



「……あ、あの……私、借り物競争が……」



うしろから必死に背伸びしてそう言ってみるけれど、みんなの勢いに押されて声が届かない。


振り返って愛里の方を見ると、早く言いなさいとでもいうように、シッシッと手を振っていた。



――やっぱり助けてくれそうにないか……



私は気を取り直してもう一度、黒板の方に向き直る。


それから今まで出したこともないくらい大きな声でさけんだ。



「あの!丸山!借り物競争でお願いします!」



わさわさとむらがるクラスメイトたちの中で、身長の低い私は手をあげたところでまったく気づいてもらえない。