「愛里にたのんでみたら?愛里のがセンスいいし」
私なんかよりずっと、愛里の方がそういう分野は得意だ。
羽生くんは、ほっぺたの右側だけをふくらませたような顔で、じとーっと私の顔を見る。
それから、やっぱだめかーと言いながら、おおげさにしゃがみ込んだ。
「えーと、愛里じゃ……だめなの?」
あんまりしょんぼりするもんだから、上からそっと小さく声をかけると、羽生くんはゆっくり顔を上げて子猫みたいな目で私を見た。
「いや、そういうことじゃなくて。丸山と一緒に行きたかったんだけど……」
こういう直球で来るところ、きらいじゃないけど苦手だ。
回りくどくないぶん、ストレートに気持ちは伝わるけど、それだけに返事に困る。
言われた方もちゃんと答えなきゃいけないって気分にさせられるから。
「えっ……と、その……」
どう答えていいものか、目を泳がせていると、羽生くんはあきらめたようにいきおいよく立ち上がった。
「ごめん、うそ。気にしないで?最近ほら俺ともよく話してくれるようになったし、もしかしたらいけるかなーって、調子乗った」
ペロッと舌を出してヘヘッと笑う羽生くん。