だから私もあえて話さない。


何かあればたぶん話すとは思うけど、そうじゃなければいたずらに愛里を心配させるだけだと思ったから……



「丸山?」



そう名前を呼ばれてハッとした。



「あ、ごめん。ボーとしちゃった、ハハッ」



ごまかすようにそう笑って、三浦くんから目をそらす。


休憩……まだ大丈夫なのかな?


いつまでも部活に戻らないでいる三浦くんが心配になる。


気がつくと、彼はもう扉の入り口にまで来ていて、私の隣にそっとたたずんでいた。



「髪……伸びたね?」



フッと笑って、肩にかかる私の二つに結わいた髪をひと束すくって、今度はその手を広げてサラサラと落とす。


また、だ。


いつもの三浦くんのくせ。


無意識に触れる彼のくせ。