何回目かの日直は、相変わらず一緒の男子に押し付けられて一人きり。


でも今までとちょっとちがうのは、その男子と少しは普通に話せたこと。



「悪い、俺、部活あってさ。頼めるかな?」



おなじみの言葉を言われて、私は初めてこの人にうなずくだけじゃない返事をしたのかもしれない。



「いいよ、大丈夫。でも黒板の上の方だけでいいから消してもらえるかな?私じゃ届かなくて」



そう言って笑顔を向けると、ちょっぴりおどろいたような顔をした彼は、特にいやがる素振りも見せず、わかったと言って急いで黒板に向かっていった。


ここ何回かは、ちょうど愛里が部活のない日に当たっていたから、お願いできていた。


だから今日は三浦くんに黒板を消してもらった日以来の一人きりの日直。


愛里や羽生くんや三浦くんたちが部活に行くのを見送って、私は一人教室に残る。


先に黒板を消そうとして苦笑した。


あの人、ほんとに上の方だけ消してったんだ。


急いでいるのが丸わかりなくらい雑な消し方。


でも自分の届かない場所はある程度消されてるから、こないだよりはずっとましだ。