愛里には中学生の頃からいつも彼氏がいて、今も4つ年上の大学生と付き合ってる。


私と違って大人っぽい愛里は、恋の上級者だ。


そんな彼女の話は、まだ恋愛初心者の私にはドキドキすることばかりで……


それでも未知の世界を知ることは、私の中で楽しみの一つだった。


今日もお弁当を食べながら、私は愛里に話をせがむ。




「ねぇねぇ、彼氏とは最近、どう?」




「どうって、普通だよ

私のことより、自分はどうなの?

好きな人とかいないの?」




好きな人と言われて、私の頭に浮かんだのは、あのシャーペンの彼。




――いやいや、違う!好きとかそういうんじゃないし!




慌ててそれを打ち消して、愛里の質問に答えた。




「う~ん、いない、かな?」




ウソはついてない。好きとかじゃないもん。


上目遣いにそう言えば、愛里は大袈裟にため息をついた。




「なんでそんなに恋愛には興味あるくせに、実際には好きな人、出来ないんだろうねぇ?美羽は……」




頬杖をついて私を見る愛里は、そんな仕草でさえも可愛くて、うらやましいと思う。


長いまつげでクリっとした目も、プクッとした桜色のくちびるも、サラサラでつやのある長い黒髪も、全部私にはないものだ。




「美羽は自分が思ってるより、ずっと可愛いよ?もっと自信持ちなって」