初恋マニュアル

煙が一本上に向かって伸びていく。


早苗さんはチンと鈴を鳴らした。



「2年前にね?亡くなったの」



そう悲し気に見つめる先には、三浦くんによく似た人の遺影が飾られていた。



「事故だった……」



どこか遠い目をして、早苗さんは語り始める。



「私たち、学生の頃からの付き合いでね?二人でお店を持つのが夢だったの」



言いつつ、手で私たちにソファーを勧めてくれる。


私たちがうながされるままにソファーに座ると、早苗さんはその対面のスツールに腰かけた。



「高校を卒業してすぐに結婚して、二人で必死に働いたわ。お店の資金を貯めるためにね?」



さっきまでよくしゃべっていた愛里でさえ、今は黙ったままだ。



「5年目にようやく資金が出来て、これからって時だった」



遠い目をしていた早苗さんが、フッと笑ってこっちを見た。



「孝弘くんね?あれでも中学の頃やんちゃでね?勉強が出来る仲間とつるんで、よく悪さしてたのよ。あ、これ、孝弘くんには内緒ね?」