初恋マニュアル

たしかにそうだ。


ここに来たのは、三浦くんの過去を探りに来たわけで……


それなのにこっちの事情を話さないなんてフェアじゃなかった。


コクンと息をのんで決心すると、早苗さんの顔をしっかり見つめて口を開いた。



「三浦くん、言ったんです……好きになってもらう資格がないって……」



「資格……」



「だから、三浦くんの過去に何かあったのかなって……それでほんとはそれを聞こうと思って、ここに来たんです。……ごめんなさい」



深々と頭を下げると、愛里も一緒に頭を下げてくれた。


きっと同罪だと思ったんだろう。



「そっか……」



ガタンと音がして早苗さんが立ち上がった気配がした。


顔を上げるとやっぱり彼女は立っていて、私たちを見下ろしていた。



「来て?」



そう言って早苗さんは、奥へと歩いていった。
ぼうぜんと見送る私の肩を、愛里がたたいて現実に引き戻す。