「ねぇねぇ、すっごく可愛いお店だね?」



三浦くんと座ったあの席に、私と愛里はいた。


小声で私に話しかけてくる愛里は、すっかりこのお店を気に入ったみたいではしゃいでる。


私はといえば、目的が目的なだけにかなり緊張していた。


愛里の言葉に適当にあいづちをうって、お姉さんの姿をドキドキしながら目で追っている状態だ。


きびきびと、働くお姉さんは、髪を一つに束ねて化粧っ気のない素朴な感じなのに、目鼻だちが整っているからかそれさえもさまになっててかっこいい。


私たちが店に入ったとき、お好きな席にどうぞぉって声をかけながらほかの席の注文を取っていたから、私には気づいていないみたいだった。


もしかしたら、気づいてないんじゃなくて、覚えてないのかもしれないけど。


夏休みに一度来ただけだもん。


それもありうる。


それに覚えてくれてたとしても、三浦くんの過去についてなんて聞けるのかどうかあやしいところだ。



「ちょっと美羽、緊張しすぎだって」



背筋を伸ばして両手をひざに置いた、かしこまったスタイルの私を見かねて、愛里が顔を近づけながらそっと耳打ちしてくる。



「あ……うん、そうだよね?」



愛里の言葉で少しだけリラックスした私は、伸ばしていた背中がらほんの少し力をぬいた。