突然、ゆうくんの名前が出たことで、私は動揺してしまった。


愛里がゆうくんを思って泣いていたのは、ついこないだのことだ。



「そう、なんだ……」



遠慮がちにそう返事をすると、そんな私に気づいたのか愛里が、ちょっと!とバシッと背中をたたく。



「やだ、そんなに気をつかわないでよ。もうちゃんとふっきれてるんだから、大丈夫だってば」



「ほんと?」



「ほんとほんと」



きっとまだ忘れられないはずだと思うのに、強がってる愛里を見て、私は納得したふりをするしかなかった。



「それより、三浦くんだよ。なんで2つも上なのに、一年生やってるんだろうね?」



口に手を当てて、考えるそぶりを見せた愛里に、私も素直にうなずいた。



「病気……とか?」



愛里がそう言って、首をかしげる。



「出席日数足りなくて?でも病気だったにしては今すごく元気じゃない?」



そこまで考えて私たちはまたふりだしに戻ってしまった。


ちょうど電車が駅について、あわててホームに降りる。


外はすっかり暗くなっていて、少し肌寒いくらいだ。


家に帰るまでの間にも、あれこれ2人で三浦くんについて考えたけど、 結局答えは出ないまま私たちは家にたどり着いてしまった。