「丸山、ちょっといいかな?」



二時間目と三時間目の間の休み時間。


自分の席で次の授業の準備をしていると、ふいにそう声をかけられた。


たぶん、この声は羽生くんだ。


今まで直接話しかけられたことなんかなかったから、緊張で体がこわばる。


ちらりと目線だけ上げると、目の前に立っている羽生くんだろう人のシャツだけが見えた。



「な、なに?」



顔を上げることが出来ないまま、かろうじてうわずった声で返事をすると、羽生くんはいきなりしゃがみこんで私の顔をのぞきこんできた。


ドキッとしてパッと目をそらすと、話があるんだけど……と机の上に両腕を乗せてさらに目を合わせようとしてくる。



「えっと、話って?」



目をまともに見れないままそう答えると、羽生くんは困ったように頭をかいた。



「んー、ごめん、ここじゃちょっと……廊下、一緒に来てくれる?」



「ろ、廊下!?」



びっくりして顔を上げると、今度はバッチリ羽生くんと目が合ってしまった。