「俺の肩、つかまっていいからさ、少しあっちまで歩けそう?」



そう聞かれて三浦くんの視線の先に目を移すと、出店から少しはなれた場所に石でできたベンチみたいなのが見える。


私はその意味を理解して、うん、と小さくうなずいた。


あのくらいならと、無理して一人で歩こうとしてうでを取られる。



「あ……」



「痛いんだから、無理しちゃだめだよ、肩つかまって?」



ね?って言いながら、自分の肩に私の手を誘導する。


広い背中が目に入ってドキドキした。


ほのかなシャンプーの匂いがしてお風呂に入ってきたのかな?とか想像してしまう。


足をひきずりながら、なんとか石のベンチまでくると、三浦くんは私をそこに座らせて、ちょっと待ってて?と言って走り去っていった。


私はそこに一人でポツンと残されて、なんだか急に心細くなる。


出店からちょっとはなれているその場所は、薄暗くて静かだ。


湿った空気が肌をなでて、じんわり汗がにじむのがわかる。


虫の羽音と、さわさわと揺れる草のすれる音。



――三浦くん、どこに行ったんだろう?