「愛里、美羽ちゃん来たわよ?」



なにごともなかったようにそう言いながら、テーブルに飲み物を置いていく。


それから部屋を出ていくときにみんなにわからないように、そっと私の背中を押してくれた。



「あー!美羽!遅かったじゃん。こっちこっち」



自分の隣に手まねきしながら、愛里がテンション高めにそう言った。


その言葉に少しだけいらだちを感じてしまう。



――だって、昨日の電話で三時に行くって言ったよね?愛里だってその時間に待ってるって言ってたじゃん!



時間だって遅いどころか、少し早めに着いたっていうのに、ほかの子にはもっと早い時間に来るように言っていたとしか思えなかった。


うまく笑えなくて、硬い表情のままゆっくりと部屋の中に足をふみいれる。


浴衣はすでにあちこちに出されていて、みんなもそれぞれ選んでるようだった。



――私に好きなの選ばせてくれるって言ってたくせに……愛里のうそつき。



泣きそうになるのをこらえながら、もうどうでもいいやと、愛里の隣じゃない場所に適当に腰をおろした。