初恋マニュアル

体がこわばる。


正直、かなりショックだった。


昨日からあんなに有頂天になっていたのがバカみたいだ。


玄関に突っ立ったままうつむく私を、愛里のママは不思議そうに見てる。


このまま帰ってしまおうか?とっさにそう思った。


だけどそんなことをしたら、私はますます一人になるかもしれないとも思う。


それにせっかく誘ってくれた愛里にはじをかかせることになるかもしれない。


いつまでたっても愛里にしかなつかない、成長してない子だって思われたら?


おなさけで呼んでくれたんだとしても、一応私を気にかけてくれたことに変わりはないのだ。



「美羽ちゃん?どうしたの?」



いつまでも上がらない私に、愛里のママが心配そうに声をかけてくれる。


これ以上、子供みたいにすねてたって、何も変わらない。


それに愛里のママにまで変な風に思われたくなかった。


私はグチャグチャな思いをむりやり胸の奥に押し込んで、おじゃまします、とにっこり笑顔を作った。


愛里の部屋は二階の角部屋にある。


もう何度も来たことのあるそこが、なんだかすごく遠く感じた。