「あ、はい。ちょっぴりですけどね?」
ペロッと舌を出してそう言えば、愛里のママも可笑しそうに笑った。
「暑かったでしょう?ほら、入って入って?もうみんな来てるから」
そう言われて入りかけた足がピタッと止まる。
――みんな?えっ?私以外にも、だれか来てるの?
昨日、愛里はそんなこと一言も言ってなかった。
だから当然、去年と同じように二人で夏祭りに行くもんだとばっかり思ってたのに……
コクンとつばをのみこむ。
さっきまでのうきうきした気分はあっという間に沈んでしまった。
帽子と手袋も取りながら、おそるおそる玄関に足をふみいれると、そこには何足ものサンダルやミュールが並んでいた。
もちろん、全部愛里のなわけじゃなくて……
だれか、ほかにも友達を呼んでいたんだとわかる。
さっき感じた違和感。それは外にあった自転車の数。
やけに多かったのがその正体だった。
自分以外の友達を呼んでるなんて思いもしなかったから、まったく気づかなかった。

