ハハッと笑ってごまかす愛里は、めずらしく照れてるように見える。


ずっと恋の上級者だと思っていた愛里にも、初心者だった頃があったんだと思わせてくれた。


あの放課後の教室で気付いた自分の気持ち。


恋かもしれないと思った瞬間から、ものすごく胸が苦しくなった。


そして意識しすぎて話せなくなったのだ。


そんなの本当はいやだったのに。


だから私は、すぐに自分の気持ちは恋じゃないと封印した。


きっと相手にもされないだろう恋は、つらすぎると思ったから……


まだ、恋じゃなくていいとも思う。


友達として、あんな風に話せるだけでもじゅうぶん幸せだ。



「今はまだ友達でいいって思ってるかもしれないけど……」



「えっ?」



「そのうち、友達でいることの方が苦しくなると思うよ?」



愛里はいつも私の気持ちを先読みする。


そして友達でいいと思った私に、釘を刺すのだ。



「まあ、友達になっただけでも、美羽には進歩なんだけどね?」



顔をくもらせた私に、愛里はそう言ってやさしくほほえんだ。