愛里を見習って気にしない風を装い、黒板を見る。


その時、目の端に捉えたのは、斜め前のいつもと変わらずクルクル回るシャーペン。


私の席からは2つほど机が離れているけれど、その彼の指だけはよく見える。


いつものようにそれをじっと見ていると、さっきまでのソワソワした気持ちが、不思議と落ち着くのを感じた。


私もシャーペンを取り出して、真似してみる。


けれど不器用な私には上手く回すことが出来ずに、手からシャーペンがスルリと落ちた。


カシャン――


床に落ちるシャーペンの音。


私は慌ててそれを拾う。


一瞬、身構えたけれど、誰もそれを気にすることなく、授業に集中していた。


ホッとして、また彼の方を見る。




「……っ!」




――うそ!なんで?




慌てて下を向いて、ノートをとるふりをする。


びっくりした、まさかシャーペンの彼がこっちを向いてるなんて思わなかったから――


少し間を置いてから、恐る恐る顔を上げてみる。


当たり前だけど、彼はもう前を向いていて、クルクルとシャーペンを回していた。