「望くんと俺との距離に慎重なわけもつくづくわかったよ。望くんがふたりも父親を亡くしてるから余計そうだったんだね」
「ごめんね。話そうと思ってたんだけど、踏ん切りがつかなくて…」
「いいよ。軽々しく言えることじゃないもんな。そりゃ悩んだはずだ。
鈴音ちゃんが再婚に消極的なのは自分の体験と、望くんへの影響を心配してって思ってたんだけど、それがしっくりきすぎて、目くらましになってた。肝心の話ができてなかった」
「どういうこと?」

「おいていかれるのが怖いんでしょ」

あぁ…。

「どう考えても死に別れるのはつらいけど、実際にそうなると、想像を絶すると思う。
死ぬのがわかってる何か月なんか、並みの精神力で越えられるもんじゃない。
それを知ってるから、鈴音ちゃんは二度とそんな目にあいたくないって、自己防衛してるんだよ」

望の存在を盾にして、自分の弱さに目を瞑ってた。
踏み出す勇気のないことを望のせいにしていた。