目が覚めてきて、ベッドに翔さんがいないのに気づいた。
ヘッドボードのデジタル時計が22:15と光っている。半時間ほどウトウトしちゃったみたい。


「鈴音ちゃん」
呼ばれて見ると、翔さんはフローリングに座ってグラスを傾けている。
「起きられそうならおいでよ。一杯やろう」
私はゴソゴソと翔さんに借りたパジャマを着て、翔さんに近づいた。
恥ずかしい気がするから、部屋が明るくなくてよかった。平素を心がける。

「こっち」
翔さんが足の間の床をトントンと叩く。
翔さんの前に座ると、ふわりと後ろから抱きしめられた。

恥ずかしがることはないんだよね。恋人と結ばれた大切な夜。

「一緒にいられてうれしい」
「うん、私も」

とりとめのない話をしながら、しばらくお酒を飲んでいた。
私用に甘いお酒がいくつもあった。

「いつか一緒にお酒飲みたいって思ってたんだ」

翔さんはいつも私に合わせてくれてたから、翔さんのしたいデートができてなかったよね。
一緒にお酒を飲むくらいのささやかな願いさえ言わせずにいた。ごめんね。