沖縄帰りの翔さんはさすがに日焼けがすごくて、恋人の欲目かもしれないけど、精悍さが増した気がした。
お土産にちんすこうとソーキそばを買ってきてくれていた。
カフェでたくさんの写真を見せてもらう。色がただごとでないくらい鮮やかで、やっぱり特別ってかんじがした。

私も、入れ代わりのようなタイミングで行ってきた京都旅行のお土産に、地酒を渡した。
あまりの暑さに、たいていの写真は疲れた顔して写ってたけど、あれこれと話しながら見ていた。

カフェをあとにした車の中でも旅行ネタは続く。
「高校の修学旅行、翔さんの年からグアムになったんじゃなかった?」
「そうそう、西高初の海外修学旅行で、先生らもテンパってたよ」
「北海道もよかったけど、海外って行ってみたかったな~」
「言葉に困ったけど、楽しかったな」
「もう1年違えば…!」
「先輩、それは言ってもしょうがないよ」
和やかな会話が続いた。

「距離って、けっこうストレスになるよね」
翔さんが沖縄に行ってる間の気持ちをそのまま言葉にした。
「…ん?」
「単に会えないっていうだけじゃなく、いつもより離れてると思うと、なんだかね…」
「…うん」

翔さんはそれきり黙ってしまった。
別に返事のいる会話ではなかったけど、ブツッと切られたかんじがした。もう少し乗っかってくれそうなのに…。

あれ?なんか、記憶がかすかに刺激された。

翔さんの様子を窺ってみる。
「翔さん?」

翔さんはフーッと息をついた。
「鈴音ちゃんからそういうこと言うの、なし。このまま車でどっかに連れ込んじゃいそうになるだろ。俺には鈴音ちゃんは足りてないんだから」

やっぱり。
翔さんに伝える「好き」が、ときどき予想以上に響いちゃうんだね?

「俺も距離の重圧感、半端ないって思ってたから、鈴音ちゃんが同じように感じてたって思うと、マジでうれしい」


今までで一番わかりあえてるかもしれない。