「甘えすぎ、って思う?そうかもしれないけど、私は、千絵さんがいるから、望との生活でそんなに困ったことないの。でもそれは、最大に恵まれてることなのよ。そんな環境にいる人間が困ってる人に『何とかなりませんか』なんて、絶対言えない」
「いや、今、鈴音ちゃんと社会問題について議論する気はないけど、その中崎さんて人は、それで普通って思ってるの?」
「当たり前とは思ってないよ。すごく恐縮されてる。あとはギブアンドテイクかな。私の苦手なことを助けてもらってる」
中崎さんとの関係を伝えてるだけのつもりが、だんだん雲行きの怪しさを感じだした。

「ギブテって?たとえば何?」
「なんでそんなに気になるの?」

不機嫌そうな翔さんにさらに経緯を説明する。
「南ちゃんのお母さんってベトナムの人で、離婚して、南ちゃんを置いて国に帰っちゃったのね。南ちゃん、日本語があまり得意じゃなくて、お友達とも打ち解けられなくなってたらしいの。お母さんがいなくなってから、お父さん以外、誰ともしゃべらなかったんだって。それが、何でかはわからないけど、私と望には初対面から話してくれて、それで相談されたりして、話するようになったの」

初めて会った日に南ちゃんが私と話すのを見て、中崎さんは涙ぐんでいた。

「話の流れで私も悩みを言ったことがあって、南ちゃんをあずかる代わりに、私の悩みを解決してくれる話になったの」
「鈴音ちゃんの悩みって何だったの?」
「アウトドアの遊びをさせてあげられてない、とか、車の種類や特撮ヒーローに私が興味を持てなくて望と遊ぶのがしんどい、とか…」
「それで、どう解決したの?」
「プールとかアスレチックとかの計画してくれたり、イベントに連れて行ってもらったり…」

言ってから、自分でも地雷を踏んだって思った。