私が落ち着くのを待って、翔さんが続ける。
「それで、次が、学校で泣いてたときだ。4月早々、駐車場で泣いてただろ?」
「え…!?」
「俺が赴任してきてすぐ。駐車場の桜の木のへんで」
「見られてたの?知らなかった…」
「見つからないよう逃げたから。そのときは鈴音ちゃんだと気づいてなかったからね」

クリスマスの次に弱いのが桜。入籍した帰り道が桜吹雪だったから。

「なんか、泣いてばっかりね。恥ずかしくなる…」
「がまんしないでいいんじゃない?泣いてスッキリすることってあるし」
「…うん」
泣いていいと言ってくれることが、どんなに私を楽にさせてくれてるか、知らずにこの人は言っている。

「鈴音ちゃんが望くんのお母さんって知って、俺がびっくりしてたの、わかるだろ。
高校のとき好きだった子が、10年ぶりに会ったらひとりで泣いてて、声かけたら去年ずっと気になってた人で、って、全部つながったんだよ。もうこれは追いかけるでしょ」

私が知らないうちに、望の母として意識されていたなんて、想像もしてなかった。

聡くんに愛されて、聡くんを愛した私を気にしてくれていたの?