私はじいの昔を知らない。でも……

私は丘の方を見ながら言った。

「ねこ吉じい……」

「え?」

「おじさんが探してるのってねこ吉じいですよね?」

サトさんなら信用できると思った。

「き、きみ!ねこ吉さんを知っているのかい?」

ひどく驚いた様子で私に詰め寄るサトさん。

「いったいどこに……あ、もしかして」

私の目線を辿ったのだろう。サトさんは丘を見やる。

太陽の光に、てっぺんが時々キラリと輝いている。

「やっと……たどり着いた……ねこ吉さん」

サトさんは、感極まった様子でため息をついたあと来た道を引き返そうと走り出した。

「あっ!まっておじさん!!」

私が大声で引き止めるとサトさんはくるりと振り向き、

「ごめんね!また今度!教えてくれてありがとう」

そう言い残して素早く走り去ってしまった。

「おじさ……」

あっという間に姿が見えなくなったおじさんに私の声が届くはずもなく。


結局私たちはじいについて聞けなかったんだ。