「お兄ぃちゃーん!」 その声は先輩の方に近づいたと思うと、先輩の背中におもいきりぶつかった。 「ぐっ、」 「もぉ、一言だけ言ってすぐに行っちゃうんだから! お兄ちゃん追いかけるの大変だったんだからね!」 「え……、お兄ちゃん?」 苦しそうにする先輩の後ろから現れてそんなことを言った女の子に、私は思わず先輩と同じように目を丸くする。 「まさか、電話の相手って……」 「え、岩崎さん…?」 「えっ、渡良瀬くん!?」 私の声は、2人の驚いた声にかき消された────。