俺の頭に、いつか渡良瀬ちゃんが言っていた言葉が蘇る。 『大切な人に贈るんです!』 そう言って顔を赤くした彼女の手には、小さなお守りの形をしたキーホルダーが握られていた。 あいつが、渡良瀬ちゃんの好きなやつ…? 「お兄ちゃん?どうしたの?」 急に黙った俺を心配して、月希が俺の顔を覗き込んでくる。 「わりぃ、月希!ちょっと行ってくる!」 「えっ、お兄ちゃん!?」 俺は驚く月希を置いて、気づけば視線の先に向かって走り出していた────。