この頃から、我が家は更にどん底に落ちる

父親は日増しに暴力が強くなり

当時、母が経営してたスナックも繁盛していたにも関わらず、父親がお金を使い込んでしまう為、我が家にはゆとりがなかった。

当時小学生だった2番目の姉は、なけなしのお小遣いを自分の為には使わず、飼っている猫に缶詰を買って与えていた。

そして思っていたらしい
(いつか…大人になったらこんな貧しい生活抜け出してやる)

(欲しい物は自分で手に入れてやる)と

そして、暴力をふるう父親に「お父さん!止めて!!」と泣きながら必死に母を庇っていたらしい。
次女は、5年前に他界した父の葬儀には参列しなかった。


長女は当時の事を語らない為、何を思っていたのかは未だに分からない。

長女は今も、我慢強く思いを言葉にしない。
ずっと見ていて私が感じたのは、「愛に飢えてる人だな」と思った。
大人になった今もどこか寂しげで、身内にも本音を出そうとはしない。
心に深い、何かがあるんだろうなと思う事がある。


ある日 私が朝おきてリビングに行くと、押し入れに膝から下が真っ赤に染まった母が体育座りになり、父親に蹴られていた。

呆然と見ている私に 母は気付き「これは絵の具よ!絵の具なのよぉぉ!」と泣きながら叫んでいた。

2歳の私は絵の具の意味が分からない。

血も分からない。

お父さんが暴力を振るっているのが分からない。

お母さんが必死に私に話しかけているけれど、言っている意味が分からない。

父親は、子供には暴力を一切ふるわなかった。
むしろ可愛がっていて、この事件の後も、私の手を引いて映画館に連れていってくれた。

「バッドマン」を見た
内容がさっぱり分からずに、私はぼーっとしていた。