ーあいー

「わたしね、高校生の頃本当に大好きな人が居たの。でね、その人すごく優しくて、自分の事より相手の気持ちをしっかり考えて行動する人だった。でも、無茶苦茶な人だった。」

ゆうき「は?どーゆー事?」

「あのね、その人ゆうきくんと同じ心臓疾患だったの。」

ゆうき「えっ?」

「出逢ったのは、高校に入学して次の日。小学生ぶりに幼馴染と再会したんだけど、彼は幼馴染の友達だったの。心臓疾患だって事は、幼馴染と先生位しか知らなかった。もちろん私も知らなかった。体育の授業は、面倒くさいからサボってるって言ってた。でもね、何回も遊んでいるうちに様子がおかしかったりしたんだ。私のせいで倒れて、病院に運ばれた事もあった。それでも彼は、病気の事は口にしなかった。」

ゆうき「...」

「でね、夏休みの初日に彼と幼馴染と私の友達と4人で一泊二日で旅行に行ったの。すっごく楽しくて、この幸せな時間がずーっと続いて欲しいって思った。いつまでも、この4人はずっと一緒だと思ってた。それが当たり前だと思ってた。でも、違った。旅行の最終日に彼が言ったんだ。今まで黙ってたけど、心臓病だって事、俺の心臓はもう限界だって。だから、最期にみんなとの思い出を作りたかったって...。」

ゆうき「い、今...その人は...?」

「亡くなったよ...。旅行の次の日に...。」

ゆうき「...。」

「でもね、彼最期の最期まで、笑顔だった。笑顔で、あい笑ってって...。俺はあいの笑顔が好きだからって...。信じられないよね。まだ受け入れられてないのに、死んじゃうなんて...。彼が亡くなってから幼馴染に聞いたんだけどね、彼、病気の事言わなかったんじゃなくて、言えなかったんだって。なんでだと思う?」

ゆうき「...かっこ悪いから」

「ゆうきくんは、そう思ってるの?」

ゆうき「うん。思ってる。だって、みんなと同じことが出来ねーんだよ?もし、好きな人が出来ても守ることすら出来ねーし!かっこわりーよ。」

「そっかあ、、、。でもね、彼はこう言ったんだって。もし、俺が病気の事を話したら、こんなに幸せそうに笑ってるあいつらから一瞬で笑顔が消えちまうって。だから、言えなかったんだって。」

ゆうき「そいつ、強ぇーな。」

「私もそう思う。普通相手の気持ちまで考える余裕なんてないでしょ?」

ゆうき「ないな。むしろ、友達になんて話せない。ましてや、好きな人になんて。」

「でも、彼ね病気の事伝えた時みんなの前で泣いたんだ。俺だって、死にたくねえよって。まだ、みんなと色んなところいって色んな想い出作りてえよって。初めてだった。そんな彼を見るのは。でも、それが本当の彼の姿なのかもしれない。」

ゆうき「でも、本当にそいつすげーな。俺にはぜってー無理だ。」

「そんな事ないんじゃない?私は、ゆうきくんにも出来ると思うよ!!」

ゆうき「俺にはそんな勇気ねーよ。」

「そっか。」

ゆうき「おう。で、続きは?」

「毎年ね、彼の命日の日は彼の家にみんなで行くんだけど、ちょうど10年目の時に彼からプレゼントがあったの。」

ゆうき「は?死んだんじゃねーの?」

「彼は亡くなったけど、彼が10年経っても私達が彼の事覚えていたら渡してくれって彼のお母さんに渡してあったみたいなの。でね、みんなの封筒に写真が入ってたんだけど、私の写真には何も書かれてなかったんだよね。まあ、私が気づかなかっただけなんだけどw」

ゆうき「結局なんて書いてあったん?」

「指輪を見ろ」

ゆうき「指輪?」

「うん。指輪。私のだけ写真と一緒に指輪が入ってたの。その指輪ね、彼が野外学習で彼が作って、ずっと身につけてた物なの。でね、指輪の内側を見たら、AI FOREVER LOVE って彫ってあった。」

ゆうき「やば。めっちゃかっこいいじゃん。」

「そうなの。10年越しのラブレター。もう涙が止まらなかった。」

ゆうき「もし、その人が生きてたら結婚してた?病気が治って無かったとしても。」

「病気なんて、関係ないよ。私が好きなのは彼だから。好きになった相手がたまたま病気だったってだけだから。」

ゆうき「そっか...。先生も強いんだね。」

「そんな事ないよ。私は友達に支えられたから今の自分が生きてるんだもん。」