ーこあー


お父さんにこあの気持ちなんて絶対に分かんない。
分かってたなら家に帰れなんて言わない。

辛くて、悲しくて、この気持ちをどこにぶつけたらいいか分からなかった。


あい「こあ...。」


振り向くとそこにはあいちゃんの姿があった。


「あいちゃん、一つ聞いていい?」

あい「なに?」

「なんで、お父さんはあんなに冷たいの?」

あい「こあ?はやとは冷たい訳じゃないんだよ?ゆうきくんが亡くなって辛いのははやとも一緒。別にはやとを庇うわけじゃないよ?でもね、今頃きっと結局ゆうきくんになにも出来なかったって後悔してると思う。俺は医者なのにって...」

「そんなはず無いよ。だって、もしそうだったらゆうきが死んだ時泣いてるはずだよ?」

あい「まだ、こあには難しいかもしれないけど、あの場ではやとは泣いちゃいけないの。いくら家族ぐるみで仲良くても、あの場だと医者と遺族だから。一番辛いのは、遺族だよ。だからはやとは遺族に対して最大のフォローをしないといけない立場なの。こあは気付かなかったかも知れないけど、はやと今にも泣きそうな顔してたよ。でも、感情を押し殺して涙は流さなかった。すごい事だと思わない?私なんてこうへいの時と重なっちゃって腰抜かしちゃったんだよ?」


そう言ってあいちゃんは恥ずかしそうに笑った。


あい「だからね、はやとは冷たい人でも人の気持ちが分からない人でもないよ。」

「じゃあ、なんでお父さん本当のこと言わないの?こあ、お父さんが嘘ついつるの分かってるよ。」

あい「はやとも気付いてるよ。でも、もし今はやとが本当の事を話したらゆうき君の事もあったし、最近色々あったからこあパニックになっちゃうでしょ?だから、それを避ける為に言わなかったんだよ。今は本当の事を話す時じゃないって。」

「うそ...こあ、お父さんに酷い事...」

あい「はやとは大丈夫だよ。それも分かってるから。こあのお父さんだよ?自分の大切な子供の事を分かって無いはずないじゃん!!」


そう言ってあいちゃんはまた笑った。


あい「だから、なにも心配する事なんてないんだよ。」


こあは、あいちゃんに抱きつき声を上げてないた。