「すげぇ」
「なんだあれ。静電気みてぇだ」
2人を相手にしてもまるで苦戦している様子はない。いや、そもそもその余裕ぶりに女子の選手が遊ばれているようにすら見える。
彼女たちは決して実力がないわけではい。むしろ全国常連チームのスタメンに選ばれる実力があるのだ。
雪兎の実力が飛び抜けている。それが嫌でも分かる。現実を突き付けられているとも言えるだろう。
「…私たちもッ!」
「はいっ!」
状況を見ていた女子が動き、さらに2人が雪兎に近づいていく。
その時、雪兎のプレーに目を奪われていた彰矢は不意に我に返り周囲を見回す。
人がいない。みんな、雪兎からボールを奪おうと躍起になってポジションから外れている。それどころか、DFたちもラインを気づかぬままに上げている。
『よく回りを見るんだよ。どこなら自分が走りやすいか、どこにいればボールがもらえるか。それを考えながら動くんだ』
雪兎の言葉が脳裏によみがえる。まさか、この状況は…。
彰矢が雪兎に視線を向ける。その瞬間、彰矢は雪兎の考えを理解する。

