ボールがグランドに落とされる。ボールを自身の足で押さえた雪兎の姿は先程と同じ。
まるで時間を巻き戻したかのように、雪兎の姿は変わらない。
その姿に、グランドにいる誰もが戦慄する。
…こいつは、本物だ。
全員が悟る。荻原雪兎は、サッカー選手としての絶対的な力がある。
その確信は、雪兎への注目度を跳ね上がらせる。
「全国常連って言ってもこの程度?」
不意に雪兎が放った言葉は女子サッカー部の面々の表情を固くさせる。
それをわかった上で雪兎は、蔑んだ笑みを浮かべる。
「弱すぎて話にならねぇ」
「ッ…調子に乗るな!!」
「実力も知らないくせに!!」
雪兎の挑発に2人が一斉に雪兎に迫る。だが、その2人からのプレッシャーも意図も簡単に雪兎は避けていく。
まるで、雪兎の足にボールがくっついてしまっているかのように、ボールが離れない。

