先程までとの違いはほとんど感じられない。
それでも、この状況を打開するきっかけになれば。
そんな願望をかけて、戸木は雪兎へボールを繋ぐ。
そして、その戸木の判断はその場に動揺を走らせる。
ボールを受けた雪兎は、ゆっくりと顔をあげ、不意に口角を上げる。
それを挑発と受け取った女子のFWが雪兎からボールを奪おうとプレッシャーをかけにいく。だが、雪兎は動かない。
「もらった!!」
「…」
やっぱり、雪兎は勝つ気なんてないんじゃないか。
そんな考えが皆の頭をよぎった。…だが、ボールを奪えると確信していた女子のFWは、次の瞬間、自分の視界からボールがかき消えたことに目を疑った。
上を見上げた彼女の目に映ったのは、膝の上にボールを構えた雪兎の姿だった。

