「雪兎?」
「…」
雪兎への不信はやがて、ある者に困惑を、ある者に苛立ちを与える。
雪兎を庇っていた彰矢や大熊、戸木たちですら雪兎の行動に意図を感じられなかった。
そんな雪兎の行動に誰も理解できないまま、気づけば点差は5点。前後半15分のただでさえ時間がないゲーム。…廃部の二文字が頭を過った戸木は拳を固く握る。
「キャプテン、次ボール下さい」
「…え」
不意にかけられた言葉に一瞬呆けた戸木は、ハッとして振り返る。
自分のポジションに戻っていく雪兎の姿に、今の言葉が雪兎の放ったものだと確信する。
…今さら何を。そう感じながらも、もしかしたらと一縷の希望をみた見た気がした。この状況を打開できるとすれば、それは……。
中央に戻ってきたボール。…迷っている時間はない。
ホイッスルが鳴り、ボールを受けた戸木は雪兎に視線を投げる。

