女子の先制点にギャラリーは湧く。
同時に、グランドの中に走ったのは雪兎への疑念。
ボールへの執着心がない。
先程のプレーはそんな印象を抱かせる。疑念は、不信感を連れてくる。
そしてその疑念は、振り払われることはなくなる。
その次も、そのまた次も。
雪兎はボールを見送る。抜かれた途端、ボールへの執着心が消える。後追いは一切しない。自分のラインから決して後退しない。だからといって、前進すら微々たるものだ。
まるで、グランドの中で試合を観戦しているかのように、雪兎は見ている。見ているだけで動かない。
そんなプレーは、やがてグランド内だけでなくギャラリーにも動揺を与える。
試合に興味はない。
雪兎が放った言葉を思い出した者は戦慄する。まさか、雪兎にはこの試合そのものの興味もないのではないかと…。

