だが、その笑みも集合がかかると一瞬で消える。
グランドに出ていく先輩たちを追ってグランドに出た雪兎は、自分に突き刺さる視線の数に唾を飲む。
嫌でも手が震えてくる。それを押さえて並ぶ。
「試合は15分の前後半戦で行う。交代は3人までだ」
交代3人とはいうが、男子のベンチは2人だけ。ここにも贔屓が現れている。それを分かっていながら誰もなにも言わない。
この試合そのものが贔屓だらけでそこに平等さはない。
それを分かっていて、この場に立っている。
コイントスで決まった女子からの先攻でさえ、疑いたくなる。
そんな考えが過りながらも、雪兎は大きく息を吸い、吐きながら深くうつむく。
次に雪兎が顔を上げたとき、彼の変化に気づいたのは果たして何人か。
雪兎の目には前ほどまでの感情の揺れはない。
グランドを、選手を、全てを見透すかのような目をする雪兎は、あまりにも静かだった。

