男子サッカー部のベンチは、それぞれが思い思いにアップを始めている。
蛍斗を中心に3年は輪になってポジションの相談をしている。それを横目にしながら、雪兎は女子のベンチを見つめる。
「贔屓」
「何がだ?」
「あれ」
顔を覗かせてきた彰矢に女子のベンチを指し示す。
女子のベンチには監督の姿があり、生徒に何やら指示を出している。
対して男子のベンチには当然監督はいない。いや、そもそもサッカー部の監督は男女同じなのだ。
監督は女子を勝たせる気らしい。それがはっきり見てとれる。
「それほど雪兎を試合に出したいんだろう」
いつの間にか2人の傍に来た大熊も会話に加わる。だが、雪兎は驚きもしない。
「迷惑だ。オレは試合に興味ない」
「全く?」
「オレ自身が出ることに関してはない」
「全国で名を上げたいとかねぇの?」
「ねぇよ。…というか、さっきから何だよ」
雪兎は振り返り、彰矢と大熊に視線を向ける。

