「勝つために、お前の力をフルに使ってくれ」

「…分かり、ました」

覚悟を決めたのか、雪兎は遠慮がちに拳を打ち付けてくる。

雪兎の頬にでかでかと貼られたシップが妙に存在感を放っている。心なしか、頬も腫れているように見えた。

痛々しい。その言葉がしっくりと当てはまるような雪兎だが、戸木は言葉を撤回するつもりはなかった。

一緒にアップを始めた彰矢と雪兎を見つめていると、近づいてきた葛城に苦笑する。

感情のままに動くせいで、トラブルを招きやすい。根はいい奴だが、フォローしかねる行動もするのが玉に傷だ。

彼の言うことを大方予想しながらも、戸木は、話を聞く姿勢に入る。

「本当に入れるのかよ」

「散々昨日話し合ったと思ったけど?」

「…」

納得できてませんと顔に書いてあるぞとはあえて言わなかった。