「なに弱気になってんだよ。アウェイなんていつものことだろ?今さら怖じ気づくことねぇよ」

「…あぁ、確かに……」

「そう言えば応援される方が珍しいわ」

戸木の言葉に、3年はへらっと笑う。

流石キャプテンと言うべきか、戸木は部員の士気のコントロールが上手い。2人の雰囲気の変化に、不安そうな空気は薄れる。

ほっと息をついた戸木は、元気のいい2つ分のあいさつに振り返る。

松谷彰矢と荻原雪兎。本日の主役だ。

戸木の口角は自然と上がる。駆け寄ってきた2人に努めて笑みを向ける。

「松谷、スタメンで出てもらう。しっかりアップしろよ」

「はいっ!!」

「それと、荻原もな」

「…え?」

関係ないと思っていたのか、早くも少し離れた位置に移動していた雪兎は、耳を疑っているのかポカンとした表情をしている。

やれやれ、昨日チームに火をつけた立役者は、自分は試合に出ないと踏んでいたらしい。

理解したのか、困惑した顔をする雪兎に戸木は拳を突き出す。