「荻原、こんなことやっても先輩たちに馴染めないって分かってんだろ」

滝原の言葉に肩が揺れる。

かごを持った手が動かなくなる。…分かってる。こんなこと、オレがいくらやったって先輩たちは認めてくれない。

…分かってるのに、オレは。

「…」

滝原は黙ってかごを引っ張っていく。オレの手は滝原が進むごとに離れ、だらりと下がる。

1人、その場に取り残されて手を握る。

「…オレだって、こんなはずじゃなかったんだよ」

本当はボールを蹴りたい。がむしゃらにグランドで走りたい。

…それが出来ないから、我慢して我慢して我慢して……やっとここまで来たのに。

「ゆき…くん、どうしたの?」

かけられた声に慌てて顔を上げる。

男子サッカー部唯一のマネージャーの小月先輩。決して目立つタイプじゃない。でも、マネージャーとしてみんなから認められてる先輩だ。