「…ありがとな」

「ん?」

お礼の意味も分かってないような彰矢に何でもないと笑う。

…彰矢がこうでも、滝原と塩岡は違う。あの2人は絶対、彰矢とは正反対だ。

全部説明したとしても、納得してくれる自信はない。…どう言ったらいいんだろうな。

「なぁ、雪兎。俺さ今までで1番雪兎がくれたパスが好きだぜ!」

「ッはぁ!?」

「なんでそんなに驚くんだよ」

「…彰矢、ド速球なのな…」

「なにがだ?」

こいつに恥じらいとかあんのかと一瞬疑いたくなる。でも、どこまでもまっすぐなその姿に少し救われたような気もした。

彰矢が食べ終わると店を出る。暗くなっちまったなぁ。

あ、直矢に連絡すんの忘れた。

「雪兎、送ろっか?」

「女扱いすんなよ。今日ありがとな」

「分かった。んじゃ、また明日な!」

「また明日」

駅に走っていく彰矢に手を振って見送り、息をつく。…どうやって言い訳しようかな?

鳴り始めたスマホに苦笑いして、電話に出た。