とにかく、邪魔にならないように早めに準備した。
「雪兎!一緒に帰ろうぜ!」
「ッあ、あぁ…」
背に走った衝撃と共に、かけられた声に思わず反応が遅れる。
彰矢の顔に、遠慮も戸惑いもないことにこっちが戸惑う。
「どうかしたか?」
「いや…、彰矢は嫌じゃねぇの?」
「なにがだ?」
本当に分からないという顔をする彰矢に嬉しいんだか、演技なのかと疑いたくなる自分がいることに嫌気がさす。
彰矢はそんなやつじゃないだろ。多分、こういうタイプはすぐに顔に出る。それを出さねぇってことは、彰矢は本気で気にしてないんだ。
「雪兎、昨日のこえぇ女今日はいないよな?」
「愛華なら、多分もう帰ったと思うけど」
「おっしゃ!ハンバーガー食いに行こうぜ!俺腹減って死にそう」
ガシッと音が出そうなくらい強く肩を組まれて、若干引きずられるように部室を出る。
部室を出る間際、滝原と塩岡の視線が冷たかったような気はしたけど、彰矢の勢いに止まることは出来なかった。

