店に早足で戻る。

何があったと聞いてこようとするルナが、途中で足を止める。

「春川。続けてくれ」

「いいの?」

「あぁ」

春川の目が、一瞬2階に向けられた。だが、それ以上聞いてくるつもりはないようだった。

春川が話し始めたことで、スタッフたちも動き出す。

察してもらって、聞かれないようにするなんてガキのすることだ。

でも、今口を開けば感情的にならない自信はまったくない。

雪兎の、タイムリミットは一体いつになる。

その時が来るまで、俺がしてやれることは…。

結局、春川の話もろくに入らず、店の営業時間が始まってしまった。

店の忙しさを言い訳にして、考えることを一時的に放棄する。

何も考えないよう、ただ仕事の段取りだけを頭に巡らせていた。

直矢side end