「…ゆき、検査入院、早める?」

「……夏祭り、約束した。……だから、夏祭りまでは、検査したくない」

何を悠長なことをと、言いかけたが、青葉が睨んでくるのが分かり口を閉ざす。

「ゆき、じゃあさ。明日、血液検査だけしてもらおう?俺も直矢も、検査結果は1日でも早く分かってほしいから」

「…分かった」

雪兎の頭を撫でた青葉は、立ち上がって笑う。

「ゆっくりしてるんだよ?ご飯作ってくる」

「うん」

先に部屋を出ていく青葉だが、何も言うなと言うように俺の肩を叩く。

ケンカをする意味はない。だが、もし、手遅れになるようなことがあれば…。

「直矢、ごめんなさい」

「…」

先手を打たれたようだった。

不意に謝ってきた雪兎に、言いたかった言葉が出なくなった。

「…謝るなら、やるな」

「…」

そう言い残すのが精一杯だった。