「直矢、否定ばっかりで辛かったのはお前だろ?」

「そうだな。…はぁ、俺はそうしないと思ってても血は争えねぇ」

そう育てられた。

無意識のうちにあるのは、荻原家にとっての正しさだ。それは、世間一般での正しさとは少し違っていて。

荻原家の正義の押しつけに、ずっと抗いたくて、否定したくて、その挙げ句の果に雪兎を親から引き離す事態に巻き込んだ。

だからこそ、雪兎を連れて実家を出た。

「ゆき、薬飲ませなきゃ。俺が行くでいいよな?」

「頼む」

青羽が雪兎の薬を持って行く。

雪兎が、自分で選んだ。雪兎が雪兎らしく、生きるために選んだ。

雪兎の我慢の1つ。

「今日は飲まないって。明日は大人しくしてるってさ」

「飲ませねぇのか」

「決めるのはゆきだろ?」

青羽は明日はおかゆかなと言いながら台所に向かう。