直矢side

雪兎が部屋にこもるのを見るなり、ため息をつく。

「直矢、あれじゃあゆきが可愛そうだろ」

青羽の小言に、脳裏で雪兎の顔が浮かぶ。

裏切られたような泣きそうな顔で、全てを諦めたような暗い瞳をしていた。

あんな顔をさせてしまったのは久しぶりで、やってしまったと後悔する。

いけないことを、間違っていることを正そうとすることを優先した結果がまたこれだ。

「ゆきは全部頭では理解してるよ」

「そうだな。…そうやって、育てたからな」

雪兎は、年の離れた妹じゃない。妹扱いではなく、俺自身の子どもとして向き合わなければいけない。

ゆきが親と離れ離れになったのは、俺のせい。俺が責任をもってゆきを育てなければいけない。

ゆきを、幸せにしてやらないといけない。

それが、ゆきに対しての、せめてもの償いだから。