「…じゃあ、さっきの試合…わざと負けたんですか」

その一言は、空気を凍りつかせるには十分すぎるほどの威力だった。

でも、それはオレも感じていた。

あえて口にしなかったのに、彰矢はやっぱり、まっすぐすぎる。

すぐに彰矢の肩を掴む。そして、間髪入れずに思いっきり頭突きした。

「ッあだ!!!?」

「え?」

「キャプテン、先輩、すみません」

呆けている先輩たちに頭を下げる。

後ろで彰矢が悶えてる気がするけど、それは後回し。

今の言葉は先輩を侮辱する。思っていても、言っちゃいけないことだ。

先輩たちは、呆気にとられた部分もあったんだろう。怒りは見せず、その場はすぐに収まる。

不服そうな顔をしている彰矢にはあとでフォローは入れるとして、先輩たちとの間に溝は作る必要がないし、何より引退するのに後悔を残してはいけないと思う。

「明日から、2年と1年だけになる。これからのこと、話し合っておけよ」

「「「はい!」」」

返事があったのは、ほぼ1年だけ。

横目に見た2年の先輩たちのほとんどはどこか他人事のようだ。

…これは、ヤバイかもしれない。

そんな嫌な予感はどうしてこうも当たるのか。