手伝おうと立ち上がろうとした時、視界が黒に染まりかける。

ッ…しまった。

踏みとどまったものの、顔をあげるまでに10秒数えた。逃げるのに気をとられ過ぎたかもしれない。

「荻原、出るぞ」

「はい」

先輩の声かけにはさっと答えて出口に向かう。注目が離れたことには少し安心したけど、内心笑えなかった。

…無茶すれば、直矢たちが心配する。

迷惑だって、多分オレが考えている以上にかかってしまう。

分かってる。分かってるからこそ、自分のことを把握しなきゃいけない。

大きく息を吸い込んだのと、ほぼ同じタイミングで横から衝撃。吹っ飛ばなかったのは、抱きつかれたからだ。

「っゆき!あんたまた!!」

「分かってるならもうちょい優しく……」

「はぁ!?」

「ナンデモナイデス」

愛華の剣幕に苦笑いする。でも、すぐに表情を歪める愛華に何も言えなかった。