「キャプテン、ポジションも変わってください。キャプテンなら、十分ついていけます。あと…」
「あいつはフォローの方が得意だ。松谷たちが入った位置に下げる」
ボールが出てホイッスルが鳴り、選手交替が告げられる。
キャプテンは立ち上がって、走ってくる葛城さんに軽く手をあげる。
「お前の目はほんとすごいな。俺はこれに気づくのに1年かかった」
葛城さんとハイタッチしてグランドに出てったキャプテンの背が、不意に記憶の姿に重なる。
…すごい。ここまで直矢を彷彿させられるなんて。
それと同時に思う。もったいないなって…。
「荻原、何してんだ」
「…なんでもないですよ」
いけないいけない。そんなこと考えてる場合じゃない。…とはいっても、まぁこれでオレの仕事は選手交替のタイミング見るくらいだと思うけど。

