「チームには迷惑なんてかけねぇよ」

「なら、赤点を回避できるだけの実力があるんだな?」

「お前には関係ないだろ」

「結局そればっかだな。でもまぁ、赤点は回避できるだけの実力があるんなら、ワークなんか借りなくても出来るだろ?」

塩岡の表情が険しくなる。

忠告はした。それでも、改めないというなら、オレはもうこいつを見捨てる。

「彰矢、行こう」

「雪兎…」

「彰矢、ワーク貸せって」

足は止めない。振り返りもしない。

彰矢が貸すというなら、オレに止める権利はない。…でも、彰矢なら。

「…ごめん。他当たって」

そういい残して追いかけてくる彰矢に向かって軽く振り返ると、迷いの表情を浮かべたままだった。

もしかしたら、彰矢にとってこの決断はかなり勇気が必要なものだったのかもしれない。

笑いかけてもぎこちない顔をしているのがその証拠だ。

「…彰矢、オレはあれでいいと思ってるよ」

その言葉が彰矢の勇気になるとは思えない。でも、少しだけ表情を和らげる彰矢に笑い返した。

少し遅れて滝原とくまが追い付いてくる。

塩岡が追いかけてくることはなかった。