後半が始まる。
点差は3点。余裕なんてない。息を吐いた雪兎は、再び雰囲気を一変させる。その気迫に女子の選手たちは知らず知らずのうちに気圧されている。
男子のボールから始まる。雪兎にボールが渡った瞬間、DFが2人つく。そんな彼女たちを嘲笑うように雪兎はボールをキープする。
そして、隙を突いてパスが通る。
ポジションが崩れたDFを崩すのは容易い。3年生の連携からゴールを揺らす。
「よしっ!」
勢いは途切れていない。ハイタッチした3年生たちを見つめていた雪兎は、目の前にかざされた手に目を丸くする。
「荻原、なに固まってるんだよ」
「え、あ……」
戸木の言葉に雪兎は口をパクパクさせる。
「荻原、ほら手出せ!」
他の3年生も集り、雪兎に手のひらを向ける。その手に雪兎は呆然としていたが、不意に笑みを浮かべこの手に自分の手を重ねる。
パチンと乾いた音が響く。離れ際に無遠慮に頭を撫でられた雪兎は、照れるようにはにかみ、顔を上げた。

