ベンチに戻り、ドリンクが1人1人に手渡る。
その際に雪兎がやっていたことを伝えようとした滝原だが、雪兎から射殺さんとする視線に口を閉ざした。
「荻原、後半お前に指揮権を預けるからな」
「…嫌です」
「「「脚下」」」
雪兎の抵抗は主に3年生によって拒否される。
眉間にしわを寄せた雪兎だが、それはスルーされてしまう。
「雪兎!頑張れよっ!」
「…」
しまいには彰矢からの無邪気な励ましに雪兎は深いため息をつく。
後半開始の声がかかり、ぞろぞろとグランドに出ていく。
ドリンクを置いた雪兎もその波に乗ろうと踏み出した瞬間、一瞬、一瞬だけ動きが止まる。その些細な異変に愛華が顔色を変える。
「っゆき!」
「…」
愛華の手が雪兎の肩をつかむ前に雪兎はグランドに入っていく。伸ばした手が力なく下がる。愛華の表情は不安の色に染まる。

