先ほどのプレーに加えて、1人1人に合わせたドリンク。
雪兎から気になることは聞かれていない。雪兎は全部見ただけで判断してる。その事実に気がついた滝原は戦慄する。
同時に悟る。こんな選手を、マネージャーを、欲しがるチームはいくらでもあったはずだ。でも、雪兎は恐らくそれを全て蹴ってここに、月掛高校に、男子サッカー部に来た。
その意思の強さに感心さえした。これほどにチームに思い入れしている人はいるだろうか。
少なくとも自分は負ける。自分はただ、自分の学力にあった高校を選んで、その高校にあった男子サッカー部に所属したいと思っただけ。
雪兎のように、月掛高校の男子サッカー部に所属する目的で高校を選んでいない。
滝原は自分の中で雪兎への意識が変化するのを感じながら、その横顔を見つめた。
「…なんだよ」
「別に」
会話は弾まない。わずかに頬を染める雪兎に、心の中で笑った。

